『タクシー運転手 約束は海を越えて』 感想 ネタバレなし
知られざる光州事件の真実とは?
『タクシー運転手 約束は海を越えて』
原題/A Taxi Driver
監督/チャン・フン
出演/ソン・ガンホ
制作国/韓国
上映時間/137分
あらすじ
1980年5月、民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、光州では市民を暴徒とみなした軍が厳戒態勢を敷いていた。「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーターを乗せ、光州を目指すことになったソウルのタクシー運転手マンソプは、約束のタクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、時間ギリギリにピーターを光州まで送り届けることに成功する。留守番をさせている11歳の娘が気になるため、危険な光州から早く立ち去りたいマンソプだったが、ピーターはデモに参加している大学生のジェシクや、現地のタクシー運転手ファンらの助けを借り、取材を続けていく。
韓国の歴史的事件を元にした映画
1980年、韓国で起きた光州事件を描いた映画。
主人公であるタクシー運転手と、
光州事件の真相を追うドイツ人記者は、
実在する人物がモデルとなっています。
無知な私は光州事件について、
何も知りませんでした…
光州事件とは、
1980年5月18日から27日にかけて光州市を中心として起きた民衆の反政府蜂起。
デモの参加者は約20万人にまで増え、全実権を握る軍が市民を暴徒とみなし銃弾を浴びせた。
(映画公式チラシより)
この悲惨な事件の、
歴史的背景や事実を何も知らない
私でさえ心揺さぶられる映画でした。
主人公は冴えないタクシー運転手
主人公の冴えない個人タクシーの運転手マンソプ。
「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」という言葉につられて、
ドイツ人記者のピーターを乗せて、光州を目指すことに…
何も知らない私のような観客にとって、
光州の現実を知らない
主人公のマンソプは、
感情移入がしやすかったです。
徐々に明かされる光州事件の真実
はじめは韓国映画らしいコミカルな描写も繰り広げられるが、
徐々に光州の実態が分かるにつれて、
シリアスな展開へと変わっていく。
軍による光州への道路の検問、
人通りが少なく荒れた街並み、
そして軍の弾圧によって怪我をおった人たちがあふれる病院。
情報統制によって何も知らされていない
ソウル市街から訪れたことで徐々に真相が究明されていく
映画の構造は分かりやすい。
平和なソウル市街の現状を先に知っていたことで、
光州の悲惨な現状に、
余計に心を震わされました。
情報統制とその時代に生きた人たち
検閲により国が徹底した情報統制を行った時代。
その時代に生きた人たちは決して特別な存在ではありません。
平凡なタクシー運転手、
大学歌謡祭に出ることを夢見る大学生。
たまたま生まれた場所、
生きた時代に武力による弾圧が行われてしまっただけ…
平凡な幸せをつかめたはずの彼らが懸命に生きる姿が、
心に残る作品でした。