蛸八の備忘録 映画・漫画・ゲーム

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『タクシー運転手 約束は海を越えて』 感想 ネタバレなし

 知られざる光州事件の真実とは?
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『タクシー運転手 約束は海を越えて』

原題/A Taxi Driver

監督/チャン・フン

出演/ソン・ガンホ

   トーマス・クレッチマン

制作国/韓国

上映時間/137分

 

あらすじ

1980年5月、民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、光州では市民を暴徒とみなした軍が厳戒態勢を敷いていた。「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーターを乗せ、光州を目指すことになったソウルのタクシー運転手マンソプは、約束のタクシー代を受け取りたい一心で機転を利かせて検問を切り抜け、時間ギリギリにピーターを光州まで送り届けることに成功する。留守番をさせている11歳の娘が気になるため、危険な光州から早く立ち去りたいマンソプだったが、ピーターはデモに参加している大学生のジェシクや、現地のタクシー運転手ファンらの助けを借り、取材を続けていく。

 

 

 

 

韓国の歴史的事件を元にした映画f:id:tako3110:20180811140402j:image

1980年、韓国で起きた光州事件を描いた映画。

主人公であるタクシー運転手と、

光州事件の真相を追うドイツ人記者は、

実在する人物がモデルとなっています。

 

無知な私は光州事件について、

何も知りませんでした…

 

光州事件とは、

1980年5月18日から27日にかけて光州市を中心として起きた民衆の反政府蜂起。

デモの参加者は約20万人にまで増え、全実権を握る軍が市民を暴徒とみなし銃弾を浴びせた。

(映画公式チラシより)

 

この悲惨な事件の、

歴史的背景や事実を何も知らない

私でさえ心揺さぶられる映画でした。

 

 

主人公は冴えないタクシー運転手f:id:tako3110:20180811142658j:image

主人公の冴えない個人タクシーの運転手マンソプ。

「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」という言葉につられて、

ドイツ人記者のピーターを乗せて、光州を目指すことに…

 

何も知らない私のような観客にとって、

光州の現実を知らない

主人公のマンソプは、

感情移入がしやすかったです。

 

 

徐々に明かされる光州事件の真実
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はじめは韓国映画らしいコミカルな描写も繰り広げられるが、

徐々に光州の実態が分かるにつれて、

シリアスな展開へと変わっていく。

 

軍による光州への道路の検問、

人通りが少なく荒れた街並み、

そして軍の弾圧によって怪我をおった人たちがあふれる病院。

 

情報統制によって何も知らされていない

ソウル市街から訪れたことで徐々に真相が究明されていく

映画の構造は分かりやすい。

 

平和なソウル市街の現状を先に知っていたことで、

光州の悲惨な現状に、

余計に心を震わされました。

 

 

情報統制とその時代に生きた人たち
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 検閲により国が徹底した情報統制を行った時代。

 その時代に生きた人たちは決して特別な存在ではありません。

 

平凡なタクシー運転手、

大学歌謡祭に出ることを夢見る大学生。

 

たまたま生まれた場所、

生きた時代に武力による弾圧が行われてしまっただけ…

 

平凡な幸せをつかめたはずの彼らが懸命に生きる姿が、

心に残る作品でした。